高総検レポート No 50

2001年6月28日発行

=再編該当校は今=

高総検再編・教育条件グループ


 1999年11月に策定された「県立高校改革推進計画」にもとづき再編該当校では昨年度より統合・再編に向けた準備が始まっています。この再編計画策定にあたって、私たちは「廃校」を出さず、「教育リストラ」とさせないために取り組んできました。しかし、今現場では様々な問題が噴出しています。何故、この様な状況が生じているのでしょうか。私たち高総検では、現場の実情をリポートし、改善要求を県教委に突きつけ、さらに後期計画に生かしていきたいと考えています。このリポートでは、準備が進んでいるある「再編校」の現状を報告します。

今日も、会議、会議、また会議!

 統廃合方式は、当然のことながら2校を1校にするために数多くの問題(教育課程、内規、生徒指導)を2校間ですりあわせる必要があります。そのため、その内容を詰める会議が必然的に多くなってしまいます。ここで、どのような会議が設定されているか紹介します(資料参照)。そこにもあるように、年間約120回もの会議が設定され、2校の会議日の調整だけでも大変な状況にあり、さらに、5時以降に会議を設定せざるを得ないなど、勤務条件上の問題も生じています。

現出する統合の障害

(1) 無責任な管理職人事・・
 昨年度11月に新校準備委員会を発足させ、統合に向けてスタートしたが、今年度片方の高校の管理職が2名とも異動して、これで、話が振り出しに戻ってしまい、なかなか進まなくなってしまった。再編計画を策定し、準備を始めなければならない状況が分かっていながら、管理職を2名とも異動させてしまう県教委の対応は無責任ですまされる問題ではない。

(2) 管理職の過剰なリーダーシップ・・
 新校合同会議において、管理職が全面に出て発言するケースが続き、職員が発言しにくくなるケースがあった。校内でコンセンサスが得られていないことを管理職が「責任をとるのは私ですから。」とばかりに好き勝手に発言することも統合方式の問題点である。

(3) トップダウン式ゆえにおこる現場の困惑と両校の意識のずれ(その1)・・
 統合する両校には学校間格差が存在する場合がある。特に序列の上の学校には統合そのものや総合学科、単位制に対する違和感がぬぐい去れない傾向がある。もちろんこの傾向は序列の上下は関係なく両校の職員にもあることである。これは、現場の意向を確認せずに統合を決定したトップダウン式のために起こる問題点である。

(4) トップダウン式ゆえにおこる現場の困惑と両校の意識のずれ(その2)・・
 上記のような違和感が存在すると移行期にすり合わせていくことが難しくなってくる。移行期には、教育課程、生徒指導などすり合わせを行わなければならない問題が山積されている。しかし、新校を作っていこうという気持ちが薄いと、系列科目の立ち上げや「産業社会と人間」の開講が遅れていく。このような科目は、移行期に前倒しで行わないと新校開校時にきちんとした形で行うことができない。移行期に1つの校舎に既設校と新校が同居することにもなりかねない。

(5) 教育施設課と高校教育課の足並みの不揃い・・
 施設設備の改修で教育施設課が出てくるが、改革担当とずれが見られる。コンピュータ教室が床上げ式になっているので、多目的教室も床上げ式にしたいと要望したところ、施設課はそれは床から天井までの高さが3メートルと決まっているのでできないと回答してきた。こちらですでにコンピュータ教室は床上げが行われていると言ったところ、施設課は「それは高校教育課が勝手にやったことだ。」と答えた。県は現場には厳しいことを要求しながら、自分たちはいい加減にやっているのである。

問題は山積み!

 統合方式による再編は、2校間によるすり合わせが必ずしもうまくいるとはいえない状況です。移行期の卒業単位が揃わなかったり、新校の施設設備、系列科目への人的配置の予算がつかず、入学してくる生徒に十分な学力保障ができそうになかったりと当面の課題が山積しています。
 県が再編計画を発表した際、設置する系列が該当校ヘの事前の相談がなく、一方的に決定されました。また、それに伴う予算の裏付けがまるでないのです。こういう状況で、現場の努力だけで再編を進めていくのはとても困難なことです。また、会議の回数もとても多く、今の生徒にそのしわ寄せが行っています。

この状況をチャンスと捉え、「魅力ある」高校作りを進めよう


 今回の再編計画は、報告にあるように大変厳しい状況にあります。その第1の原因は、十分な予算を保障しないまま再編の枠組みを一方的に押しつける県教委の姿勢にあります。また、県教委の担当者も交えて苦労の末にまとめ上げた統合計画案を、県に持ち帰ると一蹴されてしまうような、担当部局の当事者能力の欠如により現場の困難さが二重三重となっているのです。しかし、再編計画は私たちにとって「魅力ある」高校作りのチャンスでもあります。このチャンスを生かすためには、再編校においても担当者のみに任せきりにするのではなく、一人一人が再編計画に関わっていくことが重要になっています。再編計画を「学校リストラ」にしてしまうか、「魅力ある」高校作りのきっかけとするかはわたしたちの取り組み方にかかっているといえるでしょう。




2000年度に行われた「再編・統合」のための会議一覧

新校準備委員会両校より管理職を入れて5名ずつ、県教委4名。月1回。
新校設置計画の作成など。  (00度8回)
新校合同会議両校の校内新校準備委員会で構成。20名程度。
新校準備委員会を受けて、具体的にさまざまな事項にっいて両校ですり合わせを行う。両校の各種合同会議で原案を作り、新校合同会議で合意を得て、さらに職員会議で合意を得てから、ようやうやく決定となる。  (00年度25回)
移行期教育課程
合同会議
両校の校内新校準備委員より3名ずつ。
移行期(2年間)の教育課程の骨子を作る。  (00年度10回)
新校教育課程
合同会議
両校の校内新校準備委員より3名ずつ。
新校の教育課程の骨子を作る。  (00年度10回)
新校施設
合同会議
両校の校内新校準備委員より3名ずつ。
新校の施設の原案を作る。  (00年度5回)
新校を考える会
担当者会
両校の校内新校準備委員より2名ずつ。
「開かれた学校」を視野に入れて、新たな組織を作る。  (00年度2回)
合同系列会議1校1系列あたり7名から9名程度(トータル6系列)。
普段は各校で別々に会議がもたれているが、合意が必要な時には合同で行われる。  (00年度3回)
新校分掌会議移行期から新校にかけての分掌の仕事のすりあわせを行う。
各校1分掌あたり2名ずつ。  (00年度4回)
校内新校準備委員会各校におかれている校内組織。各教科から1名以上。定例は週に1回だが、必要に応じて行われることが多い。長期休業中にも1日会議が数回行われる。5時からの会議も多い。  (00年度50回以上)



再編該当校アンケート集約(抜粋)

2000年10月16日現在
神奈川県高等学校教職員組合
再編問題対策本部

I 「再編施設規模調査表」に記載した施設設備等について、現段階で問題が発生して場合は具体的に記入してください。
  • 情報工作室、ビオトープの要求が削られた。ほとんどの教室の規模が小さくなってしまった。小ホールは別段階での予算の問題となるということです。
  • 食堂、図書館、視聴覚教室など、移設・新設などはいっさい認められなかった。一部施設が実現されないためまとめていたカリキュラムを変更せざるを得ない部分も出てきている。
  • 食堂、実習室など大きなものはすベて×(やむなし)ラウンジのための段差解消も×農場、ハウス→保留

II 「基本計画案」の内容について課題や問題が発生している場合は具体的に記入してください。
  • 生活・福祉系の授業のための生活・福祉教室、芸術・表現系の授業の他の器楽教室が施設課の指摘で改修計画からけずられようとしている。
  • 両校ともに3学期制と職員会議で議決したのに2学期制と書き換えられていた。自由選択科目に出していない科目がいくつか入っていたのでとってもらった。代表科目にはこちらが決めた以外の科目も書き加えられており、そのまま載せることになった。
  • 必履修科目、自由選択科目の内容が学校の意図したものが反映されていない。
  • 「世界と日本」と出した系列に対して「国際」という表現を入れるよう、かなり強い指導があった。最終的には「地域・国際」系列で落ち着く。

III 来年度以降の定数策定(加配)について具体的な要望事項を記入してください。
  • 該当校が希望した科目に非常勤がつくように是非していただきたい。
  • 移行期における選択科目の前倒しと拡充のため、加配を要望している。移行に伴う定員縮小期の加配も是非お願いしたい。
  • 1クラス減だと定数上は3名減になります。新校に向けて新たな選択科目も開校予定でそれに加えてこれまで以上に再編の業務の多忙になります。現在の加配人数(41+5)は最低でも確保して欲しい。それに、芸術、家庭科、情報、商業科目の非常勤は確保して欲しい。

V 再編移行期にあたっての課題や問題点について具体的に記入してください。
  • 全てが問題
  • 再編移行期の入試上の問題点(両校で別々に募集がうまく受け入れられるか)両校での意見の一致を見なかった場合の調整方法。
  • 教員の削減計画を単年度の加配ではなく、統合年度に向けての計画を示してもらわないとほとんどの教員が変わらなければならなくなる。同窓会・PTA・周辺住民との問題がほとんど進んでいない。
  • 履修形態の前倒しによる教員の配置は可能か?募集停止校の教育保障について(進級、行事、部活動等)