本文へジャンプ

ホーム > 神奈川の教育情報 > ニュース >横浜旭陵高 授業に「認知行動療法」

横浜旭陵高 授業に「認知行動療法」

神奈川新聞2023年8月17日

自己肯定感どう上げる県教委
物事の捉え方や変容促す

 県立横浜旭陵高校(横浜市旭区)が授業を通じて生徒の自己肯定感を高める取り組みに挑戦している。注目したのは物事の捉え方や行動の変容を促す「認知行動療法」。昨年から教員有志が授業への活用を始め、今年は学校全体で取り組みを推進する。(加地紗弥香)

 「手紙の書き方の単元で、『推し』に手紙を書き、返事も自分で書く。そこでの物事の捉え方の変化が狙いです」。今月上旬、校内研修で国語科の澤口真理教諭が認知行動療法を取り入れた指導案を共有した。友人が抱える悩みをアイドルなどの「推し」に相談すると仮定し、「推し」の立場にも立ってアドバイスを考えてみる。同じ出来事でも見方が変わると、その後の感情や行動が変わるという実感を得てもらう考えだ。
 子どもを対象とした認知行動療法に詳しい桜美林大学の小関俊祐准教授は「自分のことだと書きづらいが、問題と距離を置いて取り組めるのがいい」とうなづく。この日、教員ら35人が小関准教授から同療法の活用について講義を受けた。
 同僚法は、ストレスなどで狭くなった認知や行動が生み出す悪循環に働きかけ、好循環に変えていく心理療法。小関准教授は、うまくいった結果の背景にある生徒の行動に着目し、その行動を引き出す環境を学校現場で整備する重要性を指摘。成功体験を増やすための視覚・聴覚的な補助の仕方や実践例も示された。
 「どんなものでもいい。荒唐無稽でもいい。どうすれば肯定感が上がる授業ができるか、とにかくやってみよう」。教員らを前に大野俊世校長(61)が呼びかけた。同校には不登校を経験した生徒や支援が必要な家庭の生徒も集まる。2022年に着任した大野校長は、生徒らがさまざまな課題を抱え込み、自尊感情が低いことを気にしていた。「たまたま1人の生徒に自分のことが好きかと尋ねたとき、ものすごくかぶりを振って『大嫌い』だと否定されました」
 校長をはじめ教員らが懸念するのは、生徒らの自死だ。警察庁のデータによると22年の小中高校生の自殺者は514人で過去最多。高校生が7割を占めるという。大野校長は「学校をよりよい場所にしたい。自分が認められ、人と一緒に何かを楽しめる場所に近づければ、このような状況も改善していけるのではないか」と話す。手段を検討していた時、澤口教諭から提案されたのが同療法の活用。専門家による校内研修を経て、昨年度から有志の教員7人が授業に取り入れ始めた。
 今後、小関准教授の支援を受けながら、教員らが授業に要素を取り入れていく。有志による授業公開も実施する予定だ。生徒にもアンケートを行い、認知の変化も捉える。
 学校の試行錯誤はこれからも続く。大野校長は「家庭も含め他の場所がつらくても、旭陵にいれば大丈夫、やっていけると思ってほしい」と語った。