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小中高教員2558人不足

神奈川新聞2022年02月01日

神奈川、小学校で最高21%

 全国の公立小中高校と特別支援学校で、2021年4月の始業日時点に2558人の教員が計画通り配置されていなかったことが31日、文部科学省が初めて実施した教員不足の全国実態調査で分かった。全体の5.8%の1897校が該当。小中学校では多忙化への敬遠などから教員志望者が減少傾向にあるといい、産育休取得者や病気休職者を補う人材が不足する現状が浮かんだ。
 5月1日時点の集計では4.8%に当たる1591校で2065人が不足し、別の調査では、21年度採用の公立小教員試験の倍率が2.6倍で過去最低を更新したことも判明。文科省は「採用倍率が低下したのと連動し、代替の教員確保が難しくなっている」として、支援策を講じる方針。
 教員不足調査は計画的な採用に役立てるため68の都道府県・政令指定都市教育委員会などに実施。配置計画や、始業日と5月時点の実際の配置を集計した。始業日時点の学校種別では、小学校は4.9%に当たる937校で1218人が不足。中学校では7.0%の649校で868人、高校は4.8%の169校で217人、特別支援学校は13.1%の142校で255人だった。
 このうち小学校356校では、462人分の学級担任が埋まらず校長や教頭、少人数指導のために配置した教員らでカバーしていた。中学校30校、高校5校で、理科や数学、実技教科の担当者が見つかっていなかった。
 不足が生じた学校の自治体別割合で最も高いのは、小学校では神奈川県の21.4%、中学校は福岡市の40.6%だった。
 不足の理由を項目ごとに尋ねると、「産育休取得者数が見込みより増加」に53教委が「当てはまる」を選び、「病休者数が増加」は49教委、「特別支援学級数が増加」は47教委。文科省などによると、不足分は従来、教員採用試験を目指す教員免許保有者らを講師に臨時採用し補ってきた。だが、団塊世代の大量退職で採用が増える一方、義務教育の学校現場の多忙化などが避けられ、志願者が減ったとみられる。
 補充の難しさについて、調査では61教委が「講師登録名簿搭載希望者の減少」を要因に挙げた。また、36教委が「臨時的任用教員のなり手が、教員免許の未更新または手続きの負担感で採用不可」と答えた。

過重労働響き教員不足に
人気回復へ改革急務

負担軽減など「本気で」
 学校教員に欠員が生じても、すくには埋められない実態があることが文部科学省が初めて実施した教員不足調査で明らかになった。各地で人材が足りなくなる一因に、学校が過酷な職場だとの認識が広まって人気が落ちたことを挙げる意見が少なくない。文科省が進める働き方改革で魅力を取り戻せるのか、取り組みは緒に就いたばかりだ。

◇1.5クラス
 関東地方の公立小学校に勤める30代男性教諭は、2年連続で欠員に直面した。2020年度は、新人が精神疾患を理由に5月の大型連休明けから休職。3学期まで代わりが見つからず、副校長が学級担任を兼務した。副校長は本来業務もあり、複数の教員が普段の授業や遠足の準備などを分担。男性教諭は「1.5クラス分働いた」と振り返る。
 教員が次々と入れ替わるためか、子供たちに落ち着きがなく、ちょっとした言い合いなどが増えたようだった。21年度も別の教員が2学期から産休を取り、補充が来たのは数カ月後。事前に教育委員会が講師の候補者を探したが「既に働いている」などの理由で断られ続けたという。

◇人材が枯渇
 「人材が枯渇状態にある」。21年4月の始業日時点で、公立小の18%で教員不足だった熊本県教委の担当者はそう言って頭を悩ませる。これまでは、いったん採用試験が不合格になって再チャレンジを目指す「教員の卵」たちを、欠員を埋める講師などになってもらうため名簿に登録していた。近年は、団塊世代の大量退職に伴い採用者数を増やしたことで名簿登載者が減少した。
 採用試験の受験者も減少傾向で、特に小学校では20年度実施試験(21年度採用)の競争率が全国平均で2.6倍となり過去最低に。文科省担当者は「採用が好調な民間企業に流れたのではないか」と推測する。

◇新しい課題
 ただ、学校現場では、職業としての人気低下が影響しているとの見方が強い。パソコン端末を活用した授業実践や、小学校での英語教科化、新型コロナウイルス対策の消毒作業など学校には新しい課題がのしかかり、長時間労働が慢性化する。中学での部活動指導も重い負担の代表格だ。
 人気低迷について、文科省の教員不足調査は「省として見解を述べていない」と明確を避ける。一方、東京都内の私立大で教員養成課程を担当する教授は「多忙化や過重労働を懸念し、明らかに人気が落ちいてる。免許を取っても教員にならない学生が増えた」と明かした。
 文科省も学校の働き方改革に着手し、外部人材の活用や事務職員の配置、タイムカード導入による労働時間管理などで改善を模索。部活動指導を地域の人たちに任せる仕組みの検討も始まる。
 現役教員の声を文科省に伝える「#教師からのバトン」プロジェクト代表で、愛知県一宮市立小教諭の加藤豊裕さん(43)は「教員不足を講師で埋めるという目先の解決策にとらわれていてはいけない。負担軽減や教員の増員に本気で取り組まなければ、なり手不足は解消しない」と話した。