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教育現場「開催ありき」に懸念も

神奈川新聞2020年06月04日

代替大会実施を要望
高校生ら署名 黒岩知事に

 部活動の早期再開や代替大会実施に向け、日本ハンドボール協会の湧永清水仁会長らが3日、県庁を訪れ、県内の高校生らの要望書や署名を黒岩祐治知事に手渡した。黒岩知事は「生徒の安全安心に配慮した上で、やりたいという気持ちを応援したい」と述べ、県内での大会開催を支援する考えを示した。
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 寄せられたのは、県内の高校球児の手紙約300通と、インターネット上で募った署名7千筆。湧永会長は「3年生にとって最後の夏はものすごく重要。それに向けて日々練習している子どもたちも多く、最後の試合をなんとか設けたい」と協力を求めた。
 これに対し黒岩知事は全国高校野球選手権をはじめ、集大成となる大会の中止は「将来の日本のスポーツ界にとっても大きなダメージとなる」と同調した。
 その上で、東京都で再び拡大傾向にあることを警戒しつつ、県内であれば感染リスクを伴う大規模な移動や宿泊をせずに大会開催が可能との認識を表明。「教育委員会にも私の方から話をしたい」と語った。
 県内の高校部活動を巡っては、県教委は県立校について29日から段階的に再開し、対外試合は8月末から可能とする指針を発表する一方、今夏の大会開催に向けた特例措置の検討も進めている。(須藤望夢)

教育現場「開催ありき」に懸念も
 高校生アスリートの率直な思いが寄せられた要望書。9年前の東日本大震災で被災し、今また白球を追う日常を奪われた球児の叫びもつづられているという。ただ、教育現場では未知のウイルスとの闘いが始まったばかり。部活動再開への受け止めはさまざまだ。
 県教育委員会が県立校に示したガイドラインでは、29日の活動再開から1週間程度は準備、片付け含めて40分限定。その後も8月末の通常登校開始までは在校時間が限られ、平日の部活動に費やせるのは、最大65分だ。
 全国選手権神奈川大会が中止となった高校野球。代替大会の開催も検討されているが、例年は8月まで3年生が活動するのは優秀校だけだ。受験に向けて再スタートする生徒も多く、指導者の間では賛否が分かれる。
 「たった1時間程度の練習で何ができるのか」。湘南地区の県立高監督が嘆く一方、横浜地区の指導者は「独自大会の出場は3年生と相談して決めたい。制限下での練習の方が学習時間を確保できる」と理解を示す。
 1日の学校再開後、教育現場は安全確保へ手探りの取り組みを続けている。部活動について考える余裕がないといった声もあり、県高等学校教職員組合の辻直也書記長は「現場の教員からさまざまな声を拾い上げたいが、施設の消毒や分散登校のあり方などの対応で精いっぱい」と明かす。
 コロナ禍の収束を見通せない中、代替大会開催の善しあしを判断するのは難しいとした上で、辻書記長は「競技団体で一方的に開催が決まると、生徒や顧問が苦しい立場に置かれる恐れがある。開催ありきではなく検討が進んでいくのが望ましい」と話した。(須藤望夢、泉光太郎)