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大切な1年、渦巻く不安

神奈川新聞2020年05月08日

休校延長、来年受験の中3
再開後「対応できる?」

 新型コロナウイルス特措法に基づく緊急事態宣言の延長を受け、県を含む県内34の自治体がも公立小中学校などの臨時休校期間を31日まで延長することを決めた。休校の長期化に伴い、9月の入学・新学期制を求める声も上がる。来年に高校受験を控える中学3年生の胸には、戸惑いと将来への漠然とした不安が渦巻いている。(井口孝夫)

 「学校には、いつ通えるのだろうか…」
 伊勢原市立中学校に通う3年の女子生徒(14)は、今月末で休校が解除できるとは、どこか信じられずにいる。
 進級して登校したのはわずか2日。学級活動の係も、委員会活動の役割も、何も決まっていないままだ。
 休校後、午前中は学校から出された5教科の課題に取り組む。どちらかといえば「インドア派」を自認し、外出できないストレスはゲームで体を動かして発散しているが、それでも最近は、「さすがに『外の空気を吸いたい』と思うようになった」。
 来年には、高校受験を控える。自身の学力に合った高校に進学するつもりだ。そのための大切な1年も、だが既に2カ月が過ぎた。休校長期化の対応策として、夏休みの短縮を決めた自治体があり、9月の入学・新学期制導入を求める学生や保護者もいる。
 再開してもどうなるのか、先行きが全く見通せない現状に、生徒は苦しい胸の内を吐露した。
「『再開しても、詰め込み過ぎの日々になってしまうのかな』『環境が一気に変わったとしたら、対応できるだろうか』といろいろ考えてしまう」


子のネット、ゲーム依存懸念 「保護者が管理を」
 新型コロナウイルスの感染拡大で休校が長期化し、自宅で過ごす子どものインターネットやゲーム依存が懸念されている。休校期間中にネット動画視聴やゲームに費やす時間が増えたとの調査結果も。依存症の専門家は、生活リズムを崩す危険性に言及し「保護者は時間の管理を」と呼び掛けている。
 アンケートアプリ開発などを手掛けるテスティー(東京都中央区)が3月27日〜4月6日、中学生から大学生までの8464人に「利用や視聴が増えた媒体」を尋ねた結果、高校生の71%、中学生の72%が「スマートフォン」と答えた。そのうち利用が増えたサービスを聞くと、8割以上が動画投稿サイト「ユーチューブ」で、ゲームアプリとの回答も4〜5割いた。「自宅内で増えた行動」としてゲーム(スマホ以外)を挙げた中学生は43%、高校生33%だった。
 依存症の相談などに応じる任意団体エンジェルアイズ(東京)の遠藤美希代表は「部活動や受験に目標を持てない子どもがゲームなどにはまりやすい。あらゆる活動が制限されている今回の休校では目標を見失い、ネットやゲームに没頭する子どもが増えるのでは」と懸念する。
 感染拡大後に「ネット動画の視聴がやめられない」という相談も寄せられているが、両親が在宅勤務になったことで、子どものゲーム時間を管理できるように好転したケースもあったという。遠藤さんは「ネットやゲームは子どたちの重要なコミュニケーション手段となりつつある。それだけに管理する保護者の役割が重要だ」と訴える。
 遠藤さんら専門家は、子どものネット・ゲーム依存を予防するポイントとして(1)ネット動画の視聴時間、ゲームのプレー時間を決める(2)徹夜などで生活リズムを乱さない(3)休校期間中にやるべきことをつくる―を挙げる。
 依存症の専門治療を行う国立病院機構久里浜医療センター(横須賀市)の樋口進院長は、現在の外来患者に目立った変化は表れていないとしつつ「生活リズムが狂い、学校再開時などに通常の生活に戻れない子どもが増える可能性がある」と指摘した。

 子どものネット・ゲーム依存を予防するポイント
  • ネット動画の視聴時間、ゲームのプレー時間を決める
  • 徹夜などで生活リズムを乱さない
  • 休校期間中にやるべきことをつくる
※専門家の取材に基づく