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来春開校の県立中高一貫校

神奈川新聞2008年09月01、08日

演劇風アレンジで分かりやすく演出
「子ども向け」説明会(上)

 来春、六年制に改編され開校する二つの県立中等教育学校(中高一貫校)で説明会が相次いで開かれている。中でも八月は「子ども向け」と銘打ち、演劇風のやりとりを取り入れるなど、一期生となる小学六年生に分かりやすく演出。過去の説明会では慎重姿勢だった進学の数値目標まで明言するなど、二校が競うようにPRに力を注いでいる。
   (鈴木秀隆)

 校名案は八月八日、県教育委員会から「平塚中等教育学校」(現・県立大原高校)、「相模原中等教育学校」(同・県立相模大野高校)と発表されている。
 グリーンホール相模大野で同月六、八の両日(一日二回)開催された「相模大野中等教育学校」(田中均・県立相模大野高校長)の説明会は計約五千人を集めた。

教師「赤い光と緑の光を合わせると何色になるかな」
児童「黄色!」児童「オレンジだと思います」
教師「じゃあ、光を合わせます…おぉ、黄色になるんですね一。では、縁、赤、青の三色を合わせると…」

 同校の特色ある教科・科目の一つ、「サイエンスチャンネル」の授業体験で二人の教師が掛け合い漫才のようにやりとりしながら質問すると、積極的に児童が答える会場は活気に満ちた。観察や実験を通して現象を分析する力や探究心を養い、科学的に筋道を立てて考える力を身につけるのが狙いだ。
 さらにIT(情報技術)活用力や英語だけでやりとりする授業を二時限連続で展開する「かながわ次世代教養」では、ウサギとカメの帽子をかぶった二人のネーティブティーチャーが登場して英語コミュニケーションの授業を紹介。イソップ童話「ウサギとカメ」をもとに、イラストや音楽に合わせて先生の発音に続く誘導をした。
 「1(アイ)」「made(メード)=it(イツト)」などと英単語を区切って発音。まず英語のリズム感に親しむ場面をつくった。
 このほか、制服の発表や児童の質問コーナーも設けられ、入学したいと思う親子の心をくすぐった。
 六年生の一人息子に付き添って座間市内から訪れた会社員の父親(51)は初めての参加。「息子が興味を持っている。分かりやすかったし、私たちの時代とかなり違うので参考になった。いろいろな地域から集まってくるのが刺激になりそう」と話した。また六年生の長女を連れた座間市内の母親(38)は中学三年の長男の様子を見て、関心を持ったという。「会場で質問するお子さんたちがしっかりしていて圧倒された。娘は関心も低く何も準備していない。うちは難しそうかなと思った」と話し、親子の間で恵識の違いをのぞかせた。
 高校受験がなく、卒業までの六年間を三段階に分けてじっくり学び、部活動にも取り組む生活に関心を持つ家庭は予想以上に多いようだ。



体験授業形式で学校生活を再現
「子ども向け」説明会(下)

 夏休み中に小学六年生を対象に開かれた県立中等教育学校(中高一貫校)の子ども向け説明会。来春の開校を控えた「平塚中等教育学校(仮称)」(現県立大原高校)、「相模原中等教育学校(同)」(現県立相模大野高校)の二校では独自色を出しながら、六年間同じメンバーで過ごす学校生活がなじみやすい体験授業形式で紹介された。
  (鈴木秀隆)

 「六年後、進学の数値目標は百六十人全員が国公立大学という指導をしたい。これは、県立中等教育学校の使命と思っている」。平塚中央公民館で八月九、十の両日(一日三回)開催された「平塚中等教育学校」(望月正大・県立大原高校長)の説明会の冒頭、同校の開校準備担当統括を兼ねる望月校長が保護者に向けて明言した。
 過去の説明会では卒業後の進学について明確な言及はなく、実績がないため判断に迷う保護者も少なからずいた。望月校長は初日の説明会後の取材に対し「「保護者の期待には応えたい」と数値目標の意義を強調した。

 「チリン、チリン、チリン、二時間目、社会」。舞台に出てきた教師が鐘を鳴らしながら大きな声で科目を告げると授業が始まった。学校生活の一日をミニ体験してもらおうという同校の「小学生向け」説明会は二日間で約二千六百人の参加申し込みがあった。そのうち六年生は約千百人。
 一回あたりの出席児童はおよそ一学年分(百六十人)にあたり、児童たちは保護者と離れて舞台前方に集合。担任によるSHR(ショートホームルーム)に続き、一時間目の「学年集会」では、二学期制で四十五分・七校時を基本とした運用や、午前八時二十分の登校後、十分間のモーニングタイムは読書の時間として年間百冊を読破してほしいと説明。部活動は当初、総合運動部と吹奏楽部、囲碁部、科学部が設けられ、週二〜三日ぐらいの活動で短時間に集中して練習するなど、中等教育学校の仕組みについて学んだ。
 二時間目以降は初日は社会と英語、二日目は国語と理科と日替わりメニューに。社会科「地理的分野」の授業では、豚肉の味を良くするため都内で品種改良された新名産の豚「TOKYO X」をテーマに展開した。
 予備知識のない状態から「TOKYOX」に何を連想するか自由に発想してもらい、都内
の豚の飼育頭数や全国の飼育ペスト5などから、「近郊農業」というキーワードを導くとともに、国内の農業の課題や食の安全性、穀物高騰問題にも触れた。
 担当教師は「中等教育学校の社会科の授業は、世の中のつながりや原因に目を向け、みんなで話し合いながら世の中に興味が持てるような力を育てたいと思っています」と呼びかけた。
 同校によると、平塚市内の六年生在籍児童は二千四百五十一人だが、今回の説明会には同市の三百三十四人をはじめ、横浜(百六十六人)、茅ケ崎(百二十五人)、小田原(九十人)など近隣市を中心に県内ほぼ全域から集まった。
 私立中学受験までは考えていないという家庭も多く、平塚市内から訪れた母親(40)は「高校受験がなくいろいろなことが学べるのが魅力だが、英語が難しそう」、厚木市内から訪れた父親(45)と母親(42)の一家は「具体的な説明で理解しやすかった。受験に余分な労力を割かないで、のびのびと過ごせそうだ」とそれぞれ感想を話していた。