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高校奨学金 需要増も「ゼロ回答」

神奈川新聞2008年02月15日

08年度県予算

 県教育委員会から奨学金の貸与を受ける高校生が依然として多い。経済的に厳しい家庭が増えているためとみられ、2007年度は08年1月末現在で06年度実績よりも29人少ない3,985人だが、01年度の約8倍に達している。一方で、応募者が募集数を大きく上回り”競争率”が高まった影響で、収入基準を満たしながら奨学金を手にすることができなかった生徒が267人に上った。
 県教委は05年度に初めて落選者(107人)を出した。以降、3年連続で生徒の希望に応えきれない状況となっていっる。
 特に06年度は募集数を1,223人も上回る4,519人が応募する異例の事態となった。約11億円の当初予算に急きょ3億円ほど積んでもなお、落選者は357人に及んだ。
 07年度当初予算は06年度の積み増し後と同額の約14億3千万円を計上。そして迎えた08年度当初予算案−。
 07年度までは応募者の増加に合わせて当初予算も上積みされてきたが、08年度は07年度当初と同額に据え置かれた。予算の頭打ちで、近年にない「ゼロ回答」となった。
 県教委高校教育課は「予算を増やせるものなら増やしたいが、県も財政的に厳しいのでぎりぎりの額」と説明する。
 予算増額が難しい背景には、奨学金を受けた社会人からの返還が進まず、高校生への貸与の原資となる返還済み額の割合が年間で50%台に低迷している事情もある。
 県教委は今後も制度を安定的に運営していくためとして、07年度から高校2年生以上で生活保護世帯を除き、成績要件を基準に加えて貸与のハードルを高くした。
 前年度の評定平均値が5段階で3.0以上の生徒に限定。返還免除の基準も厳しくし、全学年を通じた評定平均値を4.0以上から4.6以上に引き上げた。同課は「3.0は平均点で、一定の努力をしていればクリアできる。原則返還の方針に立ち返り、免除基準を上げた」としている。
 一方で、県高等学校教職員組合は「本当に必要としている生徒に届かない可能性がある」と危倶し、成績要件の設定に反対している。

(成田洋樹)

◆県高校奨学金
世帯全体の年間収入が800万円以下の家庭と、主な生計維持者の年間収入が同額以下の世帯の生徒が対象。貸与額は月に国公立2万円、私立4万円。